受賞者

令和6年度<風戸研究奨励賞> 受賞

※研究者の所属等は受賞時点のものです

授賞課題:蓄電池充放電反応ダイナミクスの原子レベル解析

ファインセラミックスセンター ナノ構造研究所 上級研究員
仲山 啓(なかやま けい)

仲山 啓氏の研究は、リチウムイオン電池の充放電におけるリチウムの脱離・挿入に伴う局所構造変化を明らかにするために、走査透過電子顕微鏡法(STEM)を用いて原子レベルのその場観察を行う研究です。特に、リチウムイオンの観察を行うことで、充放電の反応ダイナミクスの解明を目指すものです。

仲山氏は これまで、可動プローブを備えた 特殊 試料ホルダーを用いて、MoS2へのリチウム挿入反応を環状暗視野STEM法でその場観察し、原子レベルの局所構造変化の観察に成功しています。特に、リチウムの挿入過程においては、内部応力変化に応答して逐次的にドメイン構造が変化することを明らかにし、本研究手法の有用性を示しました。しかし、リチウムの直接観察や脱離過程における構造変化を捉えるには、まだ課題が残されていました。

今回の奨励賞における研究では、STEM像のS/N比の向上が期待される最適明視野STEM法を適用することにより、リチウムの分布を原子レベルで直接可視化し、反応のダイナミクスを明らかにすることを目指します。さらに、リチウムの脱離・挿入過程の観察を実現するために、対極電極であるプローブにInやSnを蒸着することで反応時の電解質の分解反応を抑制し、可逆な反応過程の観察にも挑戦します。本研究は、これまで困難とされてきたリチウム原子の直接観察により、脱離・挿入過程の反応ダイナミクスを明らかにするもので、電池研究だけでなく電子顕微鏡学の更なる発展にも寄与するものと期待されます。

よって、今後の研究の一層の発展を期待して、ここに風戸研究奨励賞を贈呈します。

仲山 啓
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