受賞者

令和6年度<風戸研究奨励賞> 受賞

※研究者の所属等は受賞時点のものです

授賞課題:三次元電子顕微鏡および機械学習を用いた成体脳内のニューロン新生の解析

名古屋市立大学大学院 医学研究科 特任助教
松本 真実(まつもと まみ)

松本真実氏の研究は、正常脳や障害脳内を移動する新生ニューロンの微細形態について連続ブロック表面走査型電子顕微鏡(SBF-SEM)を駆使して三次元的に解析するものです。動物の一生を通じて脳の脳室脳室下帯で絶えず新生ニューロンが生成されることが知られるようになりましたが、松本氏はこれまでに、SBF-SEMを用いて、これらの新生ニューロンが脳内をどのように移動するのか、その調節に関わる構造的基盤は何かについて観察を行い、出生後の脳においては、一次繊毛の局在と方向が新生ニューロンに大きな影響を与える可能性を明らかにしてきました。また、脳の損傷時にはこのような新生ニューロンが活発に障害部位に移動してその部位の再生に貢献することが期待されますが、実際には損傷部位への移動の観察は困難でした。しかし松本氏らは、多数の細胞を自動セグメンテーションする方法と研究者が修正する方法を組み合わせることで、新生ニューロンの移動誘導と脳機能再生にノイラミニダーゼ阻害剤であるザナミビルが有効であることを報告しました。

SBF-SEMの自動撮像では、膨大な情報の解析が課題となります。また、脳という複数の細胞種が複雑に混在する構造において、特定の細胞種を検出することも大きな課題となります。今回提案されている計画では、松本氏はこれまでに開発した手法を応用、発展させ、人工冬眠が脳内のニューロン新生に及ぼす影響を解析することを目指しています。人工冬眠は救急医療や手術中の臓器保護だけでなく、長期間の宇宙旅行の際の使用も検討されており、神経科学分野のみならず様々な分野への波及効果が考えられます。

松本氏は、これまで技術員として、多数の研究者の顕微鏡研究のサポートを行いながら、自らも実際の研究展開を行い、独立した研究者に成長してきた経緯もあり、それらの努力も高く評価されました。

よって、今後の研究の一層の発展を期待して、ここに風戸研究奨励賞を贈呈します。

松本真実
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