受賞者

令和6年度<風戸研究奨励賞> 受賞

※研究者の所属等は受賞時点のものです

授賞課題:GPCRによるGタンパク質活性化メカニズムの可視化

東京大学 先端科学技術研究センター 特任研究員
小林 和弘(こばやし かずひろ)

小林和弘氏は、これまでGタンパク質共役型受容体(GPCR)の構造をクライオ電子顕微鏡(cryo-EM)で可視化する点で目覚ましい成果を上げて来ました。GPCRは、ヒトのほぼ全ての生理現象に関与しており、様々な医薬品の標的となる重要なタンパク質です。小林氏は、cryo-EMを用いて、様々なGPCRとリガンド、Gタンパク質の複合体の構造を決定しています。代表的な仕事としては、(1)セレクチン(十二指腸の粘膜から分泌される消化管ホルモンで、膵液の分泌を促進させ、胃酸の分泌を抑制する働きをする)と受容体の構造、(2)血液中のカルシウム濃度を調整する副甲状腺ホルモンと受容体1型の構造(PTH1R)や、その細胞内アゴニストPCO371との複合体構造を解明してきました。

小林氏の研究提案は、これまでの研究を発展させ、GPCRの活性化メカニズムを可視化することです。このため、時間分解cryo-EMという技術を用いて、GPCRがGタンパク質と結合して活性化する過程を1秒以下の時間スケールで可視化することを目指しています。具体的には、マイクロシリンジを用いた二液混合・急速凍結装置を作製し、1秒以内に凍結することでGPCRの構造変化を捉える事を目標としています。時間精度を高めるには様々な工夫が必要と推測されますが、これまでの小林氏の実績から生化学的な方法などを用いて問題を解決し、GPCRの活性化メカニズムの詳細な分子機構が明らかになると期待されます。

よって、今後の研究の一層の発展を期待して、ここに風戸研究奨励賞を贈呈します。

小林和弘
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