受賞者

令和6年度<風戸賞> 受賞

※研究者の所属等は受賞時点のものです

授賞課題:小胞体、核膜、核膜孔のダイナミクスの高時空間分解能解析

マックスペルーツ研究所 グループリーダー
大塚 正太郎(おおつか しょうたろう)

大塚正太郎氏は、電子顕微鏡法を用いた真核細胞の核と細胞質間の物質輸送機構の2つの経路の研究を進め、核膜孔複合体と小胞体 ‐ 核膜結合の形成機構と構造の研究を進めました。

真核細胞は、細胞質と核内が核膜によって分離されており、可溶性タンパク質やmRNAなどが輸送装置などにより核膜孔を通って輸送される経路と、膜タンパク質や脂質が核膜と小胞体膜をつなぐジャンクションを介して輸送される経路が存在しています。高等真核細胞では、細胞分裂の前中期に核膜が崩壊し、細胞分裂後には迅速に核膜孔複合体を含む核膜が再形成されます。大塚正太郎氏は、加圧急速凍結後、樹脂に凍結置換して、電子線トモグラフィー法による観察を行い、核膜孔複合体が形成される過程を観察しました。さらに、核膜孔複合体の構成因子の内の10種類それぞれをGFPラベルして、蛍光顕微鏡で観察・解析し、トモグラフィー像と合わせることで、核膜孔複合体の再形成過程モデルを構築しました。この解析で、有糸分裂後と間期では、核膜孔の構成因子の集積様式が異なることも見出しました。
もう1つの輸送経路である小胞体 ‐ 核膜結合についても、HeLa細胞のトモグラフィー観察を行うことで、小胞体 ‐ 核膜結合が細胞間期において直径720nm程度に極度にくびれた接合部を形成しているという、高等真核生物に特徴的な狭窄構造を明らかにしました。さらに研究を進め、細胞分裂後期では狭窄は観られないが、細胞分裂周期の初期にこの狭窄が開始され間期で維持されることを確認しました。この狭窄構造を形成する機構は不明ですが、膜タンパク質や脂質の輸送制御に関わる重要な役割が示唆されます。

このように大塚正太郎氏は、電子線トモグラフィー法を用いた立体的な構造解析と細胞分裂において変化する過程とを合わせて解析することで、核膜輸送に関わる2つの経路の研究において目覚ましい成果を挙げ、Nature誌やNat. Struct. Mol. Biol.誌等に発表しています。

よって、れらの成果に対して、ここに風戸賞を贈呈します。

大塚正太郎
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