受賞者

令和5年度<風戸研究奨励賞> 受賞

※研究者の所属等は受賞時点のものです

授賞課題:オペランド透過電子顕微鏡法を用いた Li イオン電池の解析

ファインセラミックスセンター ナノ構造研究所 上級研究員
野村 優貴

野村優貴氏の研究は、走査透過電子顕微鏡法と電子エネルギー損失分光法を用いて、動作中のリチウムイオン電池をオペランド観察する研究です。特に、電池内部のリチウムイオンの動きを観察することによって、電池材料のリチウムイオン伝導メカニズムや電池の動作メカニズムの解明を目指すものです。

透過電子顕微鏡を用いたリチウムイオン電池の解析は、電池を解体し、取り出した材料の一部を解析することが一般的ですが、野村氏は近年、透過電子顕微鏡内部で電池を動作させながら電池を解析するオペランド透過電子顕微鏡技術の開発に成功しています。野村氏は、この技術を全固体リチウムイオン電池に適用し、充放電にともなうリチウムイオンの移動をナノメートルスケールで直接観察することによって、電池材料内部のリチウムイオン伝導経路を特定し、電池研究における重要な知見を得ました。

今回の奨励賞における研究では、これまで開発してきた電池のオペランド透過電子顕微鏡法にパルス電子線技術を組み合わせて、オペランド観察の時間スケールを飛躍的に向上させナノ秒の時間分解能での観察を目指します。特に、電池材料界面でリチウムイオンの動きがどのように阻害されるかを解き明かし、リチウムイオンの伝導抵抗の起源の解明を試みるものです。本研究構想は、これまで想像するしかなかった、一瞬のミクロな電気化学反応を実空間で可視化する試みであり、電子顕微鏡学の更なる発展に寄与するものと期待されます。

よって、今後の研究の一層の発展を期待して、ここに風戸研究奨励賞を贈呈します。

野村優貴
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