※研究者の所属等は受賞時点のものです
授賞課題:原子分解能STEM電子顕微鏡法による3次元欠陥構造解析
東京大学大学院 工学系研究科 特任准教授
石川 亮
石川氏は、最先端の収差補正STEM電子顕微鏡を用い、様々な機能材料における欠陥構造解析の直接観察を行い、多くの注目すべき研究成果を挙げています。
石川氏の代表的な業績は、大きな収束角を選択できるデルタ型収差補正機を搭載した300kV STEMを用いて、depth of focusを減少させることにより原子位置の深さ分解能を向上させ、さまざまな材料の欠陥構造を3次元的に可視化したことです。立方晶窒化ホウ素(cBN)結晶中に欠陥として存在するセリウム(Ce)原子のドーパント位置を2.1nmの深さ分解能をもって可視化した研究(Phys. Rev. Appl., (フィジカルレビューアプライド誌), 2020年)、および、マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いたデータ解析処理の導入により、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)表面の原子配列を±0.09nmの深さ分解能をもって解析した研究(ACS Nano(エーシーエス・ナノ誌), 2021年)などで他の追随を許さないような成果を得ています。
石川氏は他にも、cBN結晶中のCe原子の拡散を連続した原子分解能STEM像にとらえた研究(Phys. Rev. Lett.,(フィジカル・レビュー・レター誌), 2014年)や、微分位相コントラスト法を用いて、単層グラフェン中に存在するシリコン(Si)ドーパント単原子に生じる原子電場を可視化し、二種類のドーパントサイトについてそれぞれ3回、4回対称をもつ化学結合の異方性を捉えることに成功した研究(Nature Commun.(ネイチャー・コミュニケーション誌), 2018年)など、STEM電子顕微鏡法を用いためざましい成果を挙げています。材料の特性は一般に、材料に含まれる欠陥の性質によって支配されるため、機能材料の欠陥構造解析は電子顕微鏡がとくに重要な役割を果たす研究分野であり、石川氏の業績は材料学的に大いに評価されます。
石川氏の研究は、電子顕微鏡ハードウェアの進歩が材料学の進展に大きく貢献することを実証した点で高く評価でき、風戸賞にふさわしい業績であると判断されます。
よって、これらの成果に対してここに風戸賞を贈呈します。
https://ngem.t.u-tokyo.ac.jp/
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