※研究者の所属等は受賞時点のものです
授賞課題:アト秒電子ビームを用いたマイクロ回折イメージング
理化学研究所 開拓研究本部 理研白眉研究チームリーダー
森本 裕也
森本裕也氏の研究は、アト秒(10-18秒)のパルス幅を持つ電子線を用いてマイクロ結晶から電子回折像を観察し、アト秒時間分解能で原子・電子ダイナミクスを解明しようとする研究です。
電子線による高速度の時間分解測定は、パルスレーザーを用いたフォトカソードから発生するパルス電子線が用いられ、典型的な時間分解能はピコ秒前後で行われています。したがって、フェムト秒以下のより高速度で生じる原子・電子ダイナミクスを探求するためには、より高い時間分解能が望まれています。森本氏は、6年以上にわたり博士研究員としてドイツに滞在し、フォトカソードから放出したピコ秒パルス電子線をレーザー光により時間圧縮する技術の開発に携わり、アト秒のパルス幅を有するパルス電子線の発生に成功し、その特性を明らかにしてきました。さらに、アト秒パルス電子線を用いて、シリコン単結晶薄膜から回折像が観察できることを初めて実証しました。
今回の奨励賞における研究では、高コヒーレントなアト秒パルス電子線を発生させ、生体関連分子のマイクロ結晶からの電子回折像観察に取り組み、生体分子中の原子・電子ダイナミクスのアト秒時間分解能測定を目指します。特に、生体分子の電子線照射損傷に着目し、直流、サブ・ピコ秒、アト秒パルス電子線による試料損傷の違いの有無を明らかにし、照射損傷の本質に迫ろうと計画しています。アト秒という超高速度の時間分解測定技術は、電子回折ばかりでなく電子顕微鏡像の観察も視野に入れた、電子顕微鏡学の更なる発展に繋がると期待されます。
よって今後の研究の一層の発展を期待して、ここに風戸研究奨励賞を贈呈します。
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