令和３年度＜風戸研究奨励賞＞ 受賞

チャネルロドプシンは光刺激によりイオンの透過を制御する膜タンパク質であり、様々な生物現象を光刺激で操作する光遺伝学の重要なツールとして使われています。それゆえ、光照射後の動的な構造変化についての解析が望まれます。光照射で変化する中間体の構造解析は、結晶学的手法で詳細に研究されてきました。ただし、タンパク質が密に存在して互いが接している結晶中では構造変化が抑制される可能性がありました。近年発展が目覚ましいクライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析法を用いるとこの問題を回避できると考えられます。加藤英明氏の研究は、独自の光励起装置を開発し、クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析法により、光反応サイクルにおけるチャネルロドプシンの中間体の分子構造を明らかにしようとするものです。

中間体の構造を高分解能で解析することは容易でないと思われますが、加藤氏は暗状態のチャネルロドプシンでは、クライオ電子顕微鏡を用いて2Å分解能での解析に成功しており、機能を理解できる分解能で中間体の構造が解析されると期待されます。

チャネルロドプシンの動的構造変化の解析は、光遺伝学ツールの中間体の詳細な構造情報を与えることが期待され、風戸研究奨励賞の授賞課題として相応しいと考えられます。

よって、今後の研究の一層の発展を期待して、ここに風戸研究奨励賞を贈呈します。

東京大学大学院総合文化研究科先進科学研究機構（加藤英明研究室）