※研究者の所属等は受賞時点のものです
授賞課題:新規撮像システムと機械学習を利用した高速TEM技術の開発
ファインセラミックスセンター ナノ構造研究所 上級研究員
穴田 智史
穴田智史氏の研究は、新規画像記録システムと機械学習、特にテンソル解析法を利用することで、透過電子顕微鏡法 (TEM) の時間分解能をマイクロ秒オーダーからナノ秒オーダーにすることを目的としています。
穴田氏の研究計画では、高分解能TEMに高感度TVカメラを装着し、投影レンズとカメラのあいだに静電偏向型の「サブフレーミングシステム」を導入します。これによってTVカメラの検出部に例えば4 x 4のサブフレームを構成して、時間分解能を16倍に引き上げます。この短時間露光に伴う画像の荒れはAIを使った機械学習法で改善します。さらに分割したそれぞれの像をPCの中に3次元的な強度分布のスタックとして積み上げ、かつ離散化したものを行列の解析手法であるテンソル解析法で整理して、従来より遥かに高い500 ns の時間分解能を持つ時系列高分解能像を出力する装置を立ち上げます。
本装置は、パルスレーザー励起電子銃や照射系での静電偏向器によるパルスTEMより既存のTEMの性能や技術をそのまま活かせるところに特徴があり、その簡便性と相まって広い応用分野に適用が可能となると期待されます。
本開発技術の応用例としてCO酸化反応触媒微粒子表面の原子配列の変化の直接検出をめざしており、さらにはその観察における短時間性を活用して、電子線ダメージを受けやすい電池材料やソフト材料の高分解能観察も視野にいれています。
以上の研究は、従来のパルス電子顕微鏡法とは少し異なった方向での技術開発であり、実用材料の高速TEM観察の実現という観点からも高く評価できるものです。
よって今後の研究の一層の発展を期待して、ここに風戸研究奨励賞を贈呈します。
一般財団法人ファインセラミックスセンター ナノ構造研究所
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