受賞者

令和3年度<風戸賞> 受賞

※研究者の所属等は受賞時点のものです

授賞課題:クライオ電子顕微鏡による膜輸送体ダイナミクスの解明

横浜市立大学大学院 生命医科学研究科 教授
西澤 知宏

西澤知宏氏は、イオンチャネルや受容体そして膜輸送体など様々な膜貫通型タンパク質の構造解析で数多くの成果を挙げてきました。その多くはX線結晶解析法による成果ですが、2018年に東京大学にThermo Fisher Scientificのクライオ電子顕微鏡Titan Kriosが導入されて以来クライオ電顕単粒子像解析法による膜タンパク質の構造解析を精力的に進め、ヒトPAC1ホルモン受容体やP4-ATPaseリン脂質輸送体など生体機能に重要な膜タンパク質の構造と機能の研究で質の高い成果を挙げています。

特に、2019年のScience誌に掲載されたP4-ATPaseの構造研究では、責任著者としてP4-ATPaseの6つの反応中間体の構造を解いてその動作メカニズムを明らかにしており、その成果は国際的に高く評価されています。また、2020年のヒトPAC1ホルモン受容体の構造研究では、主に中枢神経系で様々な働きをするこのGPCRタンパク質とGタンパク質の複合体の構造を解き、臨床応用に役立つ新たなアゴニスト設計に貴重な情報を与えました。

西澤知宏氏は長らく濡木研の助教として学生を指導しつつクライオ電顕による膜タンパク質の構造解析研究を牽引し、濡木研の論文発表についてもその大半について責任著者あるいは第一著者と同等の貢献者としてその中心的な役割を担いました。最近も数多くの生物学的に重要な膜タンパク質の構造解析に関わり、Nature等の国際学術誌掲載論文に共著者として名前を連ねています。2021年4月からは横浜市立大学大学院生命医科学研究科の教授として研究室を主催しており、今後一層の活躍に期待したいと思います。

よって、これらの成果に対して、ここに風戸賞を贈呈します。

西澤 知宏
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