受賞者

令和2年度<風戸研究奨励賞> 受賞

※研究者の所属等は受賞時点のものです

授賞課題:イオン液体中における高分子ベシクルの形成過程のその場観察

名古屋大学 大学院 工学研究科 助教
高橋 倫太郎

高橋倫太郎氏の研究は、高分子からなるベシクルの形成メカニズムを解明するために、溶液中での形成過程を透過型電子顕微鏡により直接観察しようとする意欲的なものです。

ベシクルは一般に球殻状に閉じた膜構造を有する小胞です。二つの異なる高分子の末端同士が結合した構造を持つブロック共重合体からなる高分子ベシクルは、脂質からなるベシクル(リポソーム)に比べて、膜が厚く比較的に頑丈です。また化学修飾により様々な機能性を持たせることができるので、ナノ物質を貯蔵・輸送するためのデリバリーシステムとして期待されています。今回の奨励賞に選ばれた研究は、イオン液体の種類、溶液の濃度や温度、さらには高分子の重合度などを系統的に変化させながら、この高分子ベシクルの形成過程を透過型電子顕微鏡により直接観測することによって、ベシクルのサイズ、物質の取り込み効率、さらには形成メカニズムまでを明らかにしようというものです。

高橋氏は、イオン液体を溶媒に用いることにより、これまで透過型電子顕微鏡では観察が困難であった高分子ベシクルの自己集合体形成過程の時間変化を捉えようとしています。高橋氏は、すでに時間分解小角X線散乱(SAXS)を用いて、高分子集合体形成過程のミリ秒スケールの時間変化を捉えることに成功していて、本研究ではこれまでに培った観測技術を透過型電子顕微鏡観察にも応用し、実空間・実時間でベシクル形成過程を明らかにしようとしています。異なる手法にまたがったその場観察の一例としても大いに期待されます。

よって、今後の研究の一層の発展を期待して、ここに風戸研究奨励賞を贈呈します。

高橋 倫太郎
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