受賞者

令和2年度<風戸研究奨励賞> 受賞

※研究者の所属等は受賞時点のものです

授賞課題:クライオ電子顕微鏡によるアミノ酸輸送体の構造薬学的研究

マックスプランク生物物理学研究所 構造生物学部門 博士研究員
李 勇燦

李勇燦氏の研究は、 細胞膜を介し た 物質輸送 を担う 膜タンパク質の1つであるL型アミノ酸輸送体(LAT1について、クライオ電子顕微鏡法による最新の単粒子解析法を用いて、生理活性の異なる様々な基質が結合した状態の立体構造を高分解能で解析しようとするものです。

LAT1は多くの細胞に存在し、栄養となるアミノ酸の細胞内への取り込みに関わっています。また、がん細胞にLAT1が多く存在することから、腫瘍増殖を抑制する抗腫瘍薬の標的分子となっています。さらに、LAT1はアミノ酸の他に甲状腺ホルモンやパーキンソン病治療薬、抗がん剤などの薬物も輸送できることが分かってきました。このように、LAT1は体内の薬物動態に大きな役割を果たしていることから、薬理学的な研究が広く行われています。

李氏は、LAT1の基質認識メカニズムを明らかにするために、クライオ電子顕微鏡法による単粒子解析法を用いて、LAT1の立体構造を初めて報告しました。その結果、細胞質側に開いた大きなポケット状構造があり、これが基質認識に重要であると考えられました。しかし、基質が結合していない状態の構造であったため、多様な基質を認識するメカニズムの解明には至りませんでした。

そこで李氏は、様々な基質が結合したLAT1の立体構造を、高分解能で解析することにより、多様な基質を認識するメカニズムを明らかにしようと考え、単粒子解析法の5つの最新技術を組み合わせることを計画しています。これまでにアミノ酸(フェニルアラニンが結合したLAT1を調製し、予備的な構造解析にも成功していることから、本研究の所期の目的を達成できると期待されます。

よって、今後の研究の一層の発展を期待して、ここに風戸研究奨励賞を贈呈します。

李 勇燦
ページトップへ