※研究者の所属等は受賞時点のものです
授賞課題:「クライオ電子顕微鏡を用いた細胞間結合チャネルの構造研究」
名古屋大学 細胞生理学研究センター 教授
大嶋 篤典
大嶋篤典氏は、ほぼすべての多細胞生物が細胞間コミュニケーションのために有するギャップ結合チャネルの構造研究を通して、その開閉機構を含む生理学的機能のメカニズムの解明を目指しています。
ギャップ結合チャネルは、隣接する細胞間をつなぎ、無機イオンや水溶性分子を通過移動させる細胞間結合を構成する膜貫通型チャネルで、細胞間の物質的あるいは電気的情報交換の機能を担う重要なチャネルです。その代表的なものとして、神経細胞間の電気シナプスや免疫細胞間のサイトカイン伝達シナプスがあります。脊椎動物ではコネキシン、無脊椎動物ではイネキシンと呼ばれる膜タンパク質がギャップ結合チャネルを構成していますが、大嶋氏はその両者の構造を明らかにしました。
コネキシンでは、ヒトCx26を対象としてギャップ結合チャネル複合体のクライオ電子線結晶構造解析と共同研究によるX線結晶構造解析を行い、その12量体チャネル構造を明らかにした上で、Cx26のN末端がチャネルを物理的に開閉する障害物として働くことを解明しました。イネキシンでは、線虫INX-6を対象として、まずはクライオ電子線結晶構造解析によりその16量体構造とコネキシンより大きなチャネルサイズを明らかにし、ついでクライオ電子顕微鏡の単粒子像解析法により8量体のヘミチャネルを3.3 A分解能、16量体のギャップ結合チャネルの構造を3.6 A分解能で解析し、原子モデルを構築してチャネルの開閉機構に大きな手掛かりを得ました。その後、脂質ナノディスクに再構成したINX-6ヘミチャネルの原子モデルの構築にも成功し、チャネルの開閉における脂質の重要性を提示しました。
このように大嶋氏は、一貫してギャップ結合チャネルの構造と機能を研究し、着実に実績を重ねてこの分野に大きな貢献をしています。クライオ電子顕微鏡の活用においても、試料作製からデータ収集・画像解析に至るまで最先端の技術を駆使しており、今後ますますの活躍が期待されます。
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