受賞者

平成25年度<風戸賞> 受賞

※研究者の所属等は受賞時点のものです

授賞課題:「極低温電子顕微鏡による膜タンパク質の二次元結晶構造解析」

名古屋大学 細胞生理学研究センター 特任准教授
谷 一寿

 谷 一寿氏の研究は、極低温電子顕微鏡法を用いて、ほ乳類の細胞膜チャネルやポンプ蛋白質についてその二次元結晶を解析し、立体構造を解明することで、蛋白質機能と構造の関係を明らかにしたものです。
 細胞膜における水の膜通過にあたる水チャネルの一種であるアクアポリン4については、高解像度で分子構造を解き明かしました。特に分子中央部分にある水の通り道である狭いトンネル状部位の解析により、水素イオンは透過させないが水は高効率で透過させるアクアポリン水チャネルの選択的水透過機構のモデル構築に貢献しました。さらに、胃酸の分泌にあたるH+K+-ATPase分子では立体構造解明による新しい分子動作機構のモデルの提示、細胞間の親水性チャネルであるギャップ結合を構成するコネキシン26では分子構造変化によるギャップ結合の開閉に関するモデルの提示など、数々の膜蛋白質構造の解明とその機能との関係を明らかにしました。また、これらの電子顕微鏡データ解析のためのコンピュータプログラム開発にもあたり、その精度向上と時間の短縮に大きな貢献をしました。
このように、谷 一寿氏は極低温電子顕微鏡法を極めて有効に活用し、細胞膜の重要な蛋白質分子について、その生物学的機能を解き明かす上で大きなインパクトのある成果を得ています。


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