受賞者

平成28年度<風戸研究奨励賞> 受賞

※研究者の所属等は受賞時点のものです

授賞課題:走査透過型電子顕微鏡法による表面・界面における微小格子変形解析

ファインセラミックスセンター ナノ構造研究所 研究員
小林 俊介

小林俊介氏の研究は、近年、技術的進歩が著しい走査透過型電子顕微鏡法(STEM)を用いて界面や表面を観察し、人の目では認識できない僅かな格子変位を検出する技術の確立を目指したものです。

特に代表的な強誘電体であるチタン酸バリウムの高分解能暗視野STEM像を、同氏が独自に構築した画像処理ソフトを用いて高精度に解析し、微小変位を可視化することでドメイン構造を明らかにした研究は高く評価できます。

チタン酸バリウムの自発分極過程とそれに伴う格子の変位構造は、1940年代からX線回折などで研究されていましたが、そのデータは平均構造の情報であり、局所でどのように格子変位をしているかを原子レベルで可視化することはできていませんでした。

小林氏は、まずチタン酸バリウムから観察した暗視野STEM像の輝点配列が、試料の格子変位の情報を十分な精度で表していることを見出しました。そして、その輝点中心を精緻に解析し、数学的なアプローチにより中心位置を10 pm以下の精度で算出するアルゴリズムを確立しました。そして、各輝点配列から変位量を自動的に割り出すソフトウエアを構築し構造解析に用いています。今回の奨励賞においては、この独自に構築した解析ソフトをさらに高精度化するべく研究を進める予定です。

この研究は、肉眼で像をみて種々の解析をおこなう従来の電子顕微鏡学をさらに高精度化、自動化するきっかけとなるものであり、強誘電体の格子変位の研究だけでなく微小変位が物性に重要な役割を果たす界面や表面の研究にも適用され、高分解能電子顕微鏡法を一層発展させると期待されます。

小林 俊介
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