※研究者の所属等は受賞時点のものです
授賞課題:「電子顕微鏡を用いた中心小体構造形成過程の解析」
国立遺伝学研究所 分子遺伝研究系 教授
北川 大樹
北川大樹氏は、細胞の有糸分裂において必須の細胞小器官である中心小体が形成される過程に関する研究を行い、中心小体が複製される際の分子機構を詳細に解明しました。
中心小体は多くの真核細胞で見られる構造であり、9回対称性を示すという特徴があります。北川氏は電子顕微鏡を駆使することにより、線虫の中心小体の成分の一つであるSAS-6というタンパク質の二量体が、試験管内で9回対称のリング状構造を形成することを証明しました。これにより、SAS-6二量体が9つ自己会合するという性質を基盤として、9回対称性を持つ中心小体が形成されることが初めて明らかになりました。
北川氏はさらに一連の研究により、中心小体の複製開始時にSAS-6タンパク質が輸送される際には、PP2Aホスファターゼによる脱燐酸化作用が必要なこと、癌抑制遺伝子RBM14の発現量を減少させると、通常の複製と異なる機構で中心小体が新たに形成されること、SAS-6タンパク質の自己集合が細胞内の1ヶ所に限定して起こる機構にPLK4キナーゼによるリン酸化が関与すること、などを明らかにしました。いずれも中心小体形成の分子メカニズムを理解する上で重要な成果であり、がんをはじめ、中心小体の形成異常の関与が疑われている様々な疾病の原因解明に寄与すると考えられます。
北川氏の研究成果は国内外で高く評価されており、2013年度文部科学大臣表彰若手科学者賞、2016年度日本生化学会奨励賞を受賞したほか、複数の国際会議の講演者として招待されており、今後ますますの活躍が期待されます。
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