財団概要

理事長「ご挨拶」

Chairman 理事長 幾原 雄一

 我が国における電子顕微鏡開発技術は、1960年代半ばには国際的にもトップレベルの水準に達し、1966年に我が国で初の国際電子顕微鏡会議(第6 回)が京都で開催されました。これを機に精密科学機器の分野で、電子顕微鏡が初めて欧米先進国に輸出されはじめ、やがては世界各国で日本製の電子顕微鏡が使用され、国際的な科学研究に大きく貢献するようになりました。このことは、日本の科学研究史上においても画期的なことでありました。このような背景の下、1968年、日本電子(株)創業者である風戸健二氏(当時社長)は、電子顕微鏡事業の成功に対する感謝をこめて、利益を社会に還元し、電子顕微鏡(学)の一層の発展を願って私財を寄付されました。その基金により風戸研究奨励会が設立され、若手研究者の育成を目的に研究助成の事業が開始され、今日まで50年以上の長きに渡り、日本電子(株)の支援の下に本事業を継続して参りました。
 一方、この50年の間の電子顕微鏡学の発展は目覚ましく、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、分析電子顕微鏡、走査透過電子顕微鏡などの性能が格段と向上し、原子・分子レベルでの構造解析、局所組成・状態分析が可能になりました。さらに近年、幾つかの革新的な新技術が実現し、電子顕微鏡に関わる分野はまさに大きな転換期を迎えています。収差補正技術の普及、バイオサイエンスへの応用、クライオTEMの躍進、プローブ顕微鏡の性能向上、その場観察技術の高度化、新規電磁場観察手法、超高感度カメラ技術、AI技術の応用、解析ソフトウェアなどの高度化・高性能化には目を見張るものがあり、現在も発展過程にあります。さらにこれらの技術が、材料、生体の解析に応用され、多くの分野において革新的な展開がなされています。電子顕微鏡(学)はまさに、材料、装置、医学、生物を問わず今後の科学技術の発展のための極めて重要なキーテクノロジーであると言っても過言ではありません。
 このような中、当財団は、電子顕微鏡に関わる分野で優れた業績を挙げられた研究者に“風戸賞”を、また、同分野での実績がありかつ将来性のある若手研究者に “風戸研究奨励賞”を、さらに若手研究者の国際会議発表を支援するために、“国際会議発表渡航助成”を贈呈しています。これまで、当財団がこれらの賞や助成を贈呈してきた研究者の総数は延べ688名にのぼります。過去の受賞者は、いずれも電子顕微鏡を通じて優れた業績を挙げられ、現在ではその多くの方が各方面で活躍しておられることは大変喜ばしいことです。
 最後になりましたが、当財団は公益事業を行う法人として、2012年4月に「公益財団法人風戸研究奨励会」として新たにスタートしております。当財団では、賞の贈呈ならびに助成事業等を通じて、財団設立目的の一層の充実をはかるとともに、我が国の電子顕微鏡分野のさらなる発展と、その未来に貢献できるよう努力していく所存です。皆様のご指導、ご鞭撻を切にお願い申し上げる次第です。

2024年7月

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