受賞者

平成24年度<風戸賞> 受賞

※研究者の所属等は受賞時点のものです

授賞課題「円環状明視野および差分位相コントラストSTEM法による材料界面の研究」

東京大学 大学院 工学系研究科 総合研究機構 准教授
柴田 直哉

 柴田直哉氏の研究は、走査透過電子顕微鏡(STEM)を用いて材料の界面構造を原子レベルで解明することを目指したものです。近年、先端材料の高機能化や微細化への要求は著しく、材料中の界面や表面が材料特性に及ぼす影響を詳しく研究する必要性が高まっています。

 柴田氏は、円環状の検出器を用いた円環状明視野(ABF)-STEM法や円環状暗視野(ADF)-STEM法を用いて3方向からの観察を駆使して、先端材料の界面構造解析を先駆的に推進してきました。とくに構造材料として期待される窒化ケイ素やアルミナ界面の原子構造を詳細に解明しました。前者については界面に偏析するドーパントがこの材料特有の脆さをどのように改善するのか、後者では界面の原子配列の決定に成功し、それが変形特性にどのような影響を与えるかの解明に光明を与えました。また触媒として重要な金/酸化チタンについて、金粒子のサイズによってその界面構造が異なることを見出し、その反応機構の解明に迫りました。これらの材料界面の研究は国際的に高い評価を得ております。
 さらに最近、分割型の電子線検出器を開発し、差分位相コントラスト(DPC)法を原子レベルにまで発展させ、高分解能DPC-STEM法の結像に関する研究を行ってきました。この手法を用いてチタン酸ストロンチウムやチタン酸バリウムを観察し、特に後者の試料では90度方向の異なる正方晶ドメイン構造をDPC-STEM像のコントラストとして視覚化することに成功しました。この研究はDPC-STEM法の応用領域を従来の磁性体から誘電体にまで拡張し、新しい高分解能STEMイメージング法を提案しました。この方法は今後、材料科学への応用展開が十分期待されます。

 柴田氏は、原子分解能走査透過電子顕微鏡法に新しい手法を付加し、それらを用いて先端材料の界面・表面構造を原子レベルで観察し、世界トップレベルの優れた成果をあげました。


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