財団概要

理事長「ご挨拶」

Chairman 理事長 廣川 信隆

 科学の発展は、その国の経済の発展に並行して起こる傾向があります。第2次大戦後、日本の科学及び経済は壊滅的打撃を経験しました。電子顕微鏡に関連する生物系、非生物系の科学もその当時欧米との落差は大変大きかったと言えます。電子顕微鏡は、フィリップス、シーメンス、RCA等、欧米系が主流で、生物系、非生物系を問わず多くの研究者は、米国やヨーロッパの研究室に留学し先進的な研究手法を学び、それを日本に持ち帰ることが電子顕微鏡第一世代の研究者のおかれた立場でした。このような状況の中にあってもこの世代の諸先輩たちは、その優秀さと大変な努力の結果、世界をリードする素晴らしい業績を上げてこられました。
 一方我が国の電子顕微鏡は、それに関わる企業、研究者、そして従業員の血の汗がにじむような努力の結果その性能を急速に上げ、同時に日本人の誇りとする、製品保守への献身的なサービスがあいまって、日本はもとより欧米での普及が急速に伸び、ついには、欧米の先進企業を脅かし、欧米先進国と肩を並べ、目覚ましい発展を遂げました。まさに日本の科学技術発展の典型的なモデルといっても過言ではないでしょう。
 1960年代半ばには国際的にもトップレベルの水準に達し、第6回国際電子顕微鏡会議が京都で開催されました。それを弾みにそれまで輸入一点張りだった精密科学機器の分野で、電子顕微鏡が初めて欧米先進国に輸出され、やがては世界各国で日本製の電子顕微鏡が使用され、国際的な科学研究に大きく貢献するようになったことは皆様もよく御存じのことであります。このことは日本の科学研究史上まさに画期的なことでありました。このような背景の下に1968年、日本電子(株)社長風戸健二氏は電子顕微鏡事業の成功に対する感謝をこめて、利益を社会に還元し、電子顕微鏡学の一層の発展を願って私財を寄付されました。その基金により風戸研究奨励会を設立され、若手研究者の育成を目的に研究助成の事業が開始され、今日まで日本電子(株)の支援の下に事業を継続して参りました。主な事業内容は風戸研究奨励金と国際会議発表研究費助成でありました。1986年に再び京都で開かれた第11回国際電子顕微鏡学会議では海外の若手研究者51名に発表研究費の助成を行いました。
 電子顕微鏡学の発展は目覚しく、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、超高圧電子顕微鏡、さらにナノ領域の局所分析電子顕微鏡へと発達して参りました。その性能は原子や原子群の配列とその挙動の直接観察、サブナノ領域の元素分析に及んでおります。理工学分野では結晶構造、格子欠陥の解析や各種分析手法により、半導体、金属合金、セラミックス、高分子等各種材料の構造とそれらの物性との関係を明らかにし、先端技術の発展に寄与しております。また、医学生物学の分野においては、動・植物細胞やウイルス、細胞小器官の構造や機能の解析、たんぱく質など機能分子の超微細構造の解明、又、現在ではクライオ電子顕微鏡により、蛋白複合体の原子レベルでの構造解析等、基礎生命科学の領域に広く応用されているばかりか、各種病態の診断といった臨床医学の分野にも活用され、人類の福祉と健康に大きく貢献しております。このように電子顕微鏡学の応用分野は、殆ど科学の全分野に亘る広大な領域に及んでおり、電子顕微鏡学に対する研究奨励の助成は例えささやかなものであったとしましても、自然科学全体への寄与は多大なものがあるといえましょう。
 このような中、当財団は2007年度から、従来の“風戸研究奨励金”の制度を“風戸賞”と“風戸研究奨励賞”とし、更に2008年度からは“国際会議発表研究費助成”を“国際会議発表渡航助成”として一新致しました。そして当財団が設立以来助成した研究者の数は現在まで590名にのぼります。受賞者各位はいずれも電子顕微鏡を通じて優れた業績を挙げられ、現在、各方面で一流の研究者として活躍しておられることは喜びに堪えません。これらの研究助成事業を通じて、財団設立目的の一層の充実を図ると共に、若手研究者のニーズにこたえられるよう鋭意努力して参ります。
 最後に、当財団は2012年4月に「公益財団法人風戸研究奨励会」として新たにスタート致しました。引き続き電子顕微鏡学の益々の発展を祈り、若手研究者への更なる支援に努力いたしますことをお約束してご挨拶とさせて頂きます。皆様のご指導、ご鞭撻を切にお願い申し上げます。

2014年7月

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