受賞者

平成29年度<風戸研究奨励賞> 受賞

※研究者の所属等は受賞時点のものです

授賞課題:電子チャネリングコントラスト法による転位運動のその場観察

九州大学 大学院 工学研究院 助教
小山 元道

小山元道氏の研究は、近年、走査型電子顕微鏡(SEM)の新たな画像技術として注目されている電子チャネリングコントラスト(ECCI)法を用いた転位運動のその場観察を行い、金属材料の塑性変形および損傷発達における転位組織発達挙動の解明とその抑制を目指したものです。特に、耐水素脆化特性および耐疲労特性の改善を目指し、バルク材料のその場観察により転位運動や転位同士の相互作用を明らかにしようする点は高く評価できます。

電子顕微鏡が材料研究で広く利用されるきっかけとなった格子欠陥研究は、透過型電子顕微鏡を中心に用いて行われてきました。近年、SEMの高空間分解能化とECCI法の登場により、バルク試料でも転位の1つ1つを捉えられるようになりました。

小山氏は、SEM-ECCI法を用いた高強度鋼の試料変形その場観察実験等により、水素がダメージの核生成とその成長を加速するという水素脆化の基本的メカニズムや、金属疲労における微小き裂進展における転位同士の相互作用を明らかにしました。また、これらの知見を基に金属微細組織の階層的構造デザインを行い、疲労き裂進展を顕著に抑制する事に成功しました。今回の奨励賞においては、材料変形に伴う転位運動の動的観察により、転位同士の相互作用のダイナミクス解明へと研究を進展させる予定です。

この研究は、バルク材料の数ミクロンから数ナノの組織観察が可能というSEMの特徴を最大限引出すと共に、構造材料のマクロ特性とナノ組織をつなぐメゾスコピック領域での現象解明を通して、安心・安全な社会の構築に資する研究と期待されます。


小山 元道
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