受賞者

平成28年度<風戸研究奨励賞> 受賞

※研究者の所属等は受賞時点のものです

授賞課題:走査型電子顕微鏡の応用的手法による腎臓病理解析法の革新

北海道大学 大学院 獣医学研究科 准教授
市居 修

市居 修氏の研究は、形態学、分子生物学等の様々な技法を用いて、病理学的なアプローチにより腎疾患の発生や進行を解析するもので、その成果は広く国際誌などに発表されています。

腎疾患、なかでも慢性腎臓病(CKD)は多くの人が罹患する病気で、進行すると人工透析をはじめとしてQOLの低下をきたすとともに医療費増など社会的にも大きな課題となっています。腎糸球体に原因がある腎疾患では、患者の腎臓の一部を採取する腎生検を用いた病理解析が、診断や治療法の決定に重要となります。採取試料は、光学顕微鏡解析用、免疫組織化学用、透過型電子顕微鏡解析用などに分割されて処理されます。一方で腎生検において得られる試料は少なく、それがさらに分割されていくことで、診断のために十分な数の糸球体を観察することが難しいこともあります。また、病理診断の中心となる超薄切片の透過型電子顕微鏡観察のためには、多大な労力、時間ならびに高度な技術を必要とします。超薄切片の大きさの限界もあり、観察可能範囲も限定されたものとなります。

最近、厚切り切片の走査型電子顕微鏡観察で、超薄切片像のような像を得る方法の開発が進んでいます。市居氏は、腎生検にこの方法を応用することで、貴重な腎生検を3分割することなくワンステップで処理することを考えました。本研究では、試料の固定条件や樹脂包埋条件の検討、厚切り切片の光学顕微鏡染色法や免疫複合体・補体検出法等を検討します。さらに、実験モデル動物やヒト臨床症例への適用等を通してその有用性を探ることで、その研究成果に高い期待がかかっています。


北海道大学 大学院 獣医学研究科

市居 修
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