受賞者

平成27年度<風戸研究奨励賞> 受賞

※研究者の所属等は受賞時点のものです

授賞課題:ショウジョウバエ脳における視覚系神経回路の電子顕微鏡法によるコネクトミクス研究

ハワードヒューズ医学研究所 ジャネリア・リサーチ・キャンパスリサーチ スペシャリスト
四宮 和範

四宮和範氏の研究は、遺伝学や発生学の分野でモデル生物として広く用いられてきたショウジョウバエの脳における視覚神経回路を研究対象として、電子顕微鏡法による3次元イメージングの手法を最大限に有効活用し、視覚対象の動きの検出に関わる神経回路をシナプスレベルで同定するなど、国際的にも評価の高い業績を上げてきました。

電子顕微鏡による生体組織の詳細な3次元観察には、組織を固定染色して樹脂包埋した試料の連続超薄切片を作成し、透過型電子顕微鏡で超薄切片を順次観察する手法が用いられます。四宮氏はショウジョウバエの脳の視覚系神経回路において物体の動きを検出する神経回路に注目し、この手法を用いて神経細胞間の特異的な結合を詳細に3次元的に追跡することにより、この神経回路の動作様式や視覚情報処理のしくみを明らかにする興味深い手掛かりを得ました。

最近ではこの手法に加えて、収束イオンビーム(FIB)により樹脂包埋試料を切削し、観察したい部分の表面を段階的に少しずつ露出させては走査型電子顕微鏡(SEM)により表面の像を観察する技術が新たな手法として確立されました。この技術はFIB-SEM法と呼ばれ、様々な生命科学分野の研究に使われるようになっています。

今回の風戸研究奨励賞の受賞対象となった四宮氏の研究計画は、物体の動きのみならず色や形の情報を処理すると考えられている視葉(optic lobe)と呼ばれる組織について、その主要部全体のFIB-SEMイメージングにより、神経細胞間の結合をシナプスレベルまで詳細に把握することで視覚系情報処理の動作様式を解析しようとするもので、その研究成果に高い期待がかかっています。


ハワードヒューズ医学研究所ジャネリア・リサーチ・キャンパス

四宮 和範
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